伝燈院 赤坂浄苑 副住職 角田賢隆

副住職 角田賢隆

改歳(かいさい)の晨(しん)を迎え謹(つつし)んで新春のお喜びを申し上げます

あけましておめでとうございます。皆さまいかがお過ごしでしょうか。 早いもので赤坂浄苑は本年で開苑十周年となります。ご多分に漏れず多少の紆余曲折があったものの、ありがたいことに二千を超える方とのご縁をいただき、お寺の維持運営は順調に推移しております。これもひとえに当苑を支えてくださる皆さま方、日々お手入れをかかさない当苑スタッフ、よりよいものへと志を共にする協力各社、すべての方のおかげと感謝いたしております。ささやかではございますが十周年の紹介記念キャンペーンを行いますので、よろしければ別紙をご参照下さいませ。

お正月は玄関先に縁起物である「門松」を出しお祝いいたしますが、 この門松について、とんちで有名な臨済宗の僧侶「一休」さんが次のような歌(狂歌)を詠んでおられます。

門松は冥土の旅の一里塚 めでたくもありめでたくもなし(一里塚は道中の目安として一里=約四キロおきに積まれた盛り土)

正月を迎えるということは、おめでたいと同時に死に近づき寂しいことでもあるんだよ。ということでしょうか。

江戸時代の平均寿命は三十~四十歳だったとされております。これは今ほど医療が発達しておらず、子供(乳児)の時期に亡くなる率が高かったため大変低い数字なんだそうですが、それゆえに昔の子供は「七歳までは神のうち」とし、神と人間の狭間にある弱く儚い存在として大切に育て、三歳・五歳・七歳の節目にお祝いをいたしました。これが「七五三」の始まりでございます。

二十歳~三十歳まで成長した成人だけで言えば平均寿命は六十歳ぐらいだったそうですが、それでも現代と比べれば大変低い数字です。それ だけ現代よりも死が身近だったわけでございます。この歌はお正月に浮かれてばかりいてはいけないよ、というようによく紹介されます。

曹洞宗の開祖である道元禅師は著書の中で「光陰矢よりも速やかなり 身命露よりも脆し」と説いております。「時の流れは速く 命は葉につく朝露のように儚いものだ」という意味です。

「冥土の旅の一里塚」をただ単に浮かれてはいけないと捉えるだけではいけません。一休さんは一年がリセットされる元日に、命や時間の大切さを考え、一生懸命前向きに精いっぱい生きる目標を立てる。そんな生き方をしましょうと諭して下さっているのではないでしょうか。

厚生労働省の発表によると日本人の平均寿命(令和二年統計)は、男性八十一歳・女性八十七歳で過去最高を更新しました。世界でも一、二 を争う長寿大国です。さらに今後は「人生百年時代」が到来するとも言われております。現に来苑される方とお話をすると八十歳を超えても生き生きとして活動的な方が多くおられます。

人生は短いのか長いのか誰にもわかりません。私自身も新年を迎え心機一転頑張ってまいりますので、皆さま方におかれましても亡くなるその時に後悔しないような生き方をしていただければ大変ありがたく存じます。

伝燈院 赤坂浄苑 角田賢隆 拝