伝燈院 赤坂浄苑 副住職 角田賢隆
お盆によせて
向暑のみぎり、当苑ご契約者様並びに檀信徒様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
今年も早いもので「お盆」の時期を迎えます。「お盆」といいますと、あの世に行ったご先祖様がこの世に戻られ家族と一緒に過ごされる期間であり、お迎えし再び送り出す行事という感覚は日本人であれば誰しもが持ち合わせていることと存じます。
ただ、ひとえに「お盆」と巾しましても「仏教行事」「民族風習」の二つの側面がございます。
「民族風習」としてのお盆は地域によって様々ですが、有名なところで言いますと「七夕」「盆踊り」「灯籠流し」「花火大会」などがあり、いずれも先祖の御霊を供養する催事であったとされております。
「仏教行事」における「お盆」は正式に「孟蘭盆」(うらぼん)といい、サンスクリット語の「ウランバナ」が元とされており、文字の意味は「逆さ吊り」でございます。
お釈迦様の弟子で神通第一といわれた「目連尊者」が得意の神通カを使い亡き舟の身を案じます。すると地獄で「逆さ吊り」の刑にあう母の姿が浮かびました。(子供を優先し他者に施しを惜しんだ罪によるとされています)
お釈迦様に相談したところ「雨季の修行が一段落した修行僧たちに食べ物などの施しをしなさい、そうすればその功徳が回り巡ってあなたの母は救われるでしょう」とのアドバイスを受けます。
そのアドバイスを実践し、めでたく母が救われた故事が「孟蘭盆」の起源とされております。
仏教寺院で行われる「お盆」の法要は「施餓鬼」といい「餓鬼会」を含む一切の衆生をご供養し、その功徳をめぐらせご自身の先祖を供養する法要でございます。
仏教では「布施」と「利他」(りた)の教えを大切にいたします。「布施」は読んで字のごとく他者に対する施しで、「利他」は他者の利益・幸福を願うことです。
他者へ行いが結果的に自分に戻ってくるという教えでございます。
何かと世知辛い世の中ではございますが、「お盆」を通じて仏教の精神に少しでも触れていただき、他者に優しく接せられるようなゆとりある生き方を実践下されば幸いでございます。
合 掌